「退職の申告は1年前」と言われた看護師へ 法律の2週間と有給の扱い

期間の定めのない雇用なら、法律上は退職を申し出てから2週間で雇用が終わります(厚生労働省の説明)。就業規則の「1年前」は、そのまま辞める人を縛るものではありません。
ただ、病棟で円満に辞めるなら、1〜2か月前に伝えて引き継ぐのが現実的です。有給休暇は退職前でも使えると労働局が説明しています。契約社員などの有期契約は扱いが別で、言い切れない所は労働基準監督署か社会保険労務士に相談してください。
「退職は1年前に言わないとダメ?」と言われたら
師長に「辞めたい」と切り出したら、就業規則の退職の条件を示された。そんな場面を書いた投稿が、2026年9月にXにありました。
「退職の申告は1年前」
Xに投稿された看護師の声(2026年9月)
投稿には、部長面談が必須で開催時期は未定、有給消化はできない、という条件も並んでいました。入る時より辞める時の方が試練が多い、という言葉も添えられています。
ここまで言われると、1年先まで動けない気がしてきます。けれど、就業規則に書いてあることと、法律や国の説明は同じとは限りません。3つの条件を公的な説明と並べたのが下の図です。
分けて考えると整理がつきます。いつ雇用が終わるかの線は法律の側にあります。どう引き継ぐか、何日に最終出勤するかは、職場と話し合って決める部分です。
就業規則の「1年前」と、法律の「2週間」の関係
厚生労働省の労働条件のQ&Aでは、期間の定めのない雇用契約は、退職を申し入れてから2週間で終了すると説明しています。民法627条の考え方です。2020年4月の改正の施行後は、月給制の人も一律に2週間になりました。
就業規則で、2週間より長い予告期間を決めている病院もあります。同じQ&Aによると、裁判例の多くは、就業規則で2週間を超える期間を定めても、その部分は無効と判断しています。
一方で、病院と話し合って辞める「合意退職」の申し込みの期限としてなら、2週間より長い期間を定めることはできる、とも書かれています。「1年前」の規定は、話し合いで辞める時の目安と読むと筋が通ります。
実際に伝える時期は1〜2か月前が目安
法律の線は2週間でも、病棟には病棟の事情があります。翌月の勤務表は、シフト希望の締切に合わせて前の月に組まれます。受け持ち患者の申し送り、委員会や係の仕事、プリセプターをしていれば新人の担当替えもあります。
1〜2か月前に伝えると、こうした引き継ぎに無理が出にくくなります。逆に、心身がもたない時や、何か月たっても話が進まない時は、2週間の線があることを知っておくだけで気持ちが軽くなります。体調が崩れている時は、退職の話より先に医師に相談してください。
この記事の「2週間」が当てはまる人
正職員など、雇用期間の定めがない人です。契約社員やパートで「◯年◯月まで」と期間が決まっている有期契約は扱いが別です。契約書を確かめたうえで、労働基準監督署か社会保険労務士に聞いてください。
出典: 厚生労働省「スタートアップ労働条件」Q&A(労働者の退職の申し出)
「有給消化は不可」と言われたら、休めないまま辞めるしかない?
「有給消化は不可」
Xに投稿された看護師の声(2026年9月)
年次有給休暇は、労働基準法39条で決まっている休みです。6か月続けて勤め、出勤すべき日の8割以上出ていれば10日。勤続6年6か月で20日になります。
病院が休む日をずらせるのは、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。これを時季変更権といいます。人手の足りない病棟では、この理由で希望日を動かされることもあるはずです。
退職前は話が変わります。大阪労働局は、退職の直前でも年次有給休暇は取れること、そして時季変更は退職日を越えてはできないことを説明しています。辞める日が決まっていれば、その後ろにずらす日がないからです。
有給は引き継ぎの予定と一緒に出す
「有給を使わせてください」とだけ言うより、日付を並べて出す方が話が進みます。例えば「最終出勤日は◯月◯日。そこから◯日分の有給を使い、退職日は◯月◯日」という形です。残りの日数は、勤怠システムや給与明細で先に確かめておきます。
それでも「不可」のまま動かない時は、病院の所在地を受け持つ労働基準監督署に相談できます。
出典: 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A(年次有給休暇)、大阪労働局「年次有給休暇」
部長面談が開かれない時は、書面と日付で伝える
「部長面談が必須」と言われても、面談がいつあるか分からなければ退職日を決められません。待っている間に次の職場の入職日が近づいて、焦りだけが増えていきます。
期間の定めのない雇用なら、2週間の数え始めは退職を申し出た日です。面談の日程とは別に、申し出た日付が残る形にしておくと、話がこじれた時の支えになります。
- まず師長に口頭で伝え、退職したい日を具体的に言う
- 同じ内容を、日付入りの書面かメールでも出す(退職日・最終出勤日・有給の使い方)
- 書面はコピーを取り、メールは送信済みのまま残す
- 面談の日程が決まらない時は「◯日までに日程をいただけますか」と期限を添えて聞く
書面の名前は、話し合いで辞める時は「退職願」、辞める意思を伝える時は「退職届」とするのが一般的です。まず退職願で話し合いの場を作り、進まなければ退職届を出す、という順番でもかまいません。
伝える時に、病棟や上司への不満を並べる必要はありません。理由は「家庭の事情」「別の分野に進みたい」など短くて足ります。話し合うのは日付と引き継ぎに絞ると、感情的なやり取りになりにくくなります。
辞める看護師は珍しい存在ではありません。日本看護協会の調査では、2024年度、回答した病院の正規雇用看護職員の離職率は11.0%でした。退職の申し出は、病院にとっても毎年受け付けている手続きです。
出典: 日本看護協会「2025年病院看護実態調査報告書」(2024年度実績・3,502病院)
辞めると決めてから入職までの時間軸
申し出から入職までを1本の線にすると、どこに締切があるかが見えてきます。
退職日の翌日から次の職場で働き始めるなら、健康保険は新しい職場で入り直す形になります。間が空く時は、自分で手続きする期限が出てきます。お金と手続きを一覧にしました。
| 手続き・お金 | 期限・目安 | 窓口 | 押さえておくこと |
|---|---|---|---|
| 年次有給休暇 | 退職日まで | 師長・人事 | 退職の直前でも取れる。退職日を越えて時季変更はできない(大阪労働局) |
| 健康保険の任意継続(協会けんぽ) | 資格を失った日から20日以内 | 協会けんぽ | 加入できるのは2年間。健保組合・共済に入っていた人は、その組合の案内を確かめる |
| 国民健康保険 | 14日以内 | 住んでいる市区町村の窓口 | 間が空き、任意継続を選ばない時 |
| 国民年金 | 日本年金機構の案内で確かめる | 市区町村の窓口・年金事務所 | 間が空く時に切り替えが要ることがある |
| 雇用保険の基本手当 | 自己都合は給付制限が原則1か月 | ハローワーク | 2025年4月1日以降の離職。5年間に2回以上の自己都合離職は3か月 |
出典: 協会けんぽ「任意継続の加入条件」、厚生労働省「国民健康保険」、厚生労働省「雇用保険の給付制限の見直し」、大阪労働局「年次有給休暇」

手帳やスマホのカレンダーに、退職日・最終出勤日・有給の日数・保険の期限を書き込んでおくと、話し合いの場でも日付で答えられます。次の職場が決まる前に辞めるなら、給付制限の1か月を含めた生活費も見積もっておきます。
次の職場は「条件を決める→病院を調べる→相談する」の順で
今の職場で困った点を、そのまま次の条件に書き換えると探しやすくなります。今回の声なら、有給の取りやすさや、退職の手続きが重くないかが条件に入ってきます。
- 年間休日と有給の取り方(年間休日120日以上の病院)
- 夜勤の形。2交代か3交代か(2交代制の病院)
- 経験年数が浅い人の受け入れ(第二新卒看護師の転職ガイド)
条件が決まったら、首都圏の病院検索で、休日・夜勤・寮などを同じ物差しで見比べます。内定が出た後なら、就業規則の退職と有給の項目を見せてもらえるか聞いてみると、入職後の見通しが立ちます。
相談先は1つではありません。都道府県のナースセンターは、法律に基づいて看護職の職業紹介を無料で行っていて、オンライン版のeナースセンターもあります。民間の転職サイトを使う時は、運営会社や許可番号を看護師転職サイトの基本情報で先に確かめておくと比べやすくなります。
出典: 日本看護協会「ナースセンターの概要」
- 1病院データベースで給与・夜勤・休日を調べる
- 2気になる条件を持って転職サイトに相談する
よくある質問
- 就業規則に「1年前」とあるのに2週間で辞めたら、規則違反って言われませんか?
- 厚生労働省の説明では、期間の定めのない雇用は申し出から2週間で終わり、裁判例の多くは就業規則で2週間を超える期間を定めた部分を無効と判断しています。ただ、話し合いで辞める方が後に残りにくいので、まず1〜2か月前に相談する形が現実的です。こじれた時は労働基準監督署か社会保険労務士に相談してください。
- 有給を全部使ってから辞めたいって言ってもいいの?
- 言って大丈夫です。大阪労働局は、退職の直前でも年次有給休暇は取れること、時季変更は退職日を越えてはできないことを説明しています。残りの日数を確かめ、最終出勤日と退職日を並べて伝えると話が進みやすくなります。
- 師長に引き止められて、話が先に進みません。辞められないの?
- 引き止めは話し合いの一部で、それだけで辞められなくなるわけではありません。気持ちが固まっているなら、退職日を書いた書面かメールを出して日付を残してください。期間の定めのない雇用なら、法律上は申し出から2週間で雇用が終わります。
- 契約社員(有期契約)でも2週間で辞められる?
- この記事の2週間は、期間の定めのない雇用の話です。「◯年◯月まで」と期間が決まった有期契約は扱いが別なので、契約書の退職の項目を確かめたうえで、労働基準監督署か社会保険労務士に聞くのが確実です。
次にやること
- 就業規則の退職の項目と、有給休暇の残り日数を確かめて手帳に書き出す
- 退職日・最終出勤日・有給の使い方を決め、日付入りの書面かメールで師長に伝えて控えを残す
- 次の職場の条件を決めてから、首都圏の病院検索で休日や夜勤を見比べる
出典・参考(確認日 2026年11月6日)