看護師7年目で「昇給580円」 事務に移った人の比べ方と見落とし

看護師の昇給額だけを事務職と比べると、夜勤手当や賞与の差が抜け落ちます。日本看護協会の2025年調査では、新卒(大卒)と勤続10年の平均基本給の差は月32,403円でした。
580円が少ないと感じたら、まず去年と今年の給与明細を並べ、定期昇給とベースアップ、手当の動きを分けて見てください。転職先とは、昇給の実績額と年収の中身で比べます。
「7年目で昇給580円」は少ないの?
急変対応もリーダーも夜勤もこなして、7年目。それでも1年の昇給は580円だった、という投稿が2026年10月にXにありました。
「昇給580円」
Xに投稿された看護師の声(2026年10月)
投稿した人は、急性期、回復期、訪問看護を経て事務職に移っています。移った先の昇給は3,500円だった、とも書かれていました。
数字だけ並べると、事務の方が6倍上がったように見えます。けれど、昇給額は年収を決める材料の1つにすぎません。夜勤手当や賞与の計算のもとになる金額も一緒に動きます。声の数字と、公的な調査の数字を並べたのが下の図です。
どちらが得かは、人によって答えが変わります。この記事では、比べる時の物差しをそろえることに絞って整理します。
昇給とベースアップは別の話
給与明細の「昇給」には、2つの中身が混ざっていることがあります。1つは、勤続年数や評価に応じて毎年上がる定期昇給。もう1つは、給与表そのものを引き上げるベースアップ(ベア)です。
病院の給料は、国が決める診療報酬に大きく左右されます。厚生労働省は2024年度(令和6年度)の診療報酬改定で、看護職員などの賃上げのための「ベースアップ評価料」を新しく作りました。令和6年度に+2.5%、令和7年度に+2.0%のベースアップを実施し、定期昇給と合わせて賃上げを目指す、と改定の資料に書かれています。
評価料で得た収入は、対象職員の基本給などの引き上げに使うことが条件です。ただ、どの項目で、いつ上げたかは病院ごとに違います。基本給に入っている病院もあれば、別の名前の手当として付いている病院もあります。
580円が少ないと感じたら、まず明細で見ること
去年の4月と今年の4月の明細を並べ、基本給と各手当を1行ずつ比べます。手当の欄が増えていれば、それも上がった分です。分からない項目は、人事課か事務の給与担当に名前の意味を聞くと早く分かります。
出典: 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(賃上げ・基本診療料等)」(令和6年3月5日版)
新卒と勤続10年で、基本給はどれくらい違う?
1人の看護師が毎年いくら昇給しているか、という全国の平均は、この記事で確かめた公的な資料には載っていませんでした。代わりに使えるのが、日本看護協会の「病院看護実態調査」です。新卒の初任給と、勤続10年の看護師の給与を病院に聞いています。
大卒の新卒と勤続10年(31〜32歳・非管理職)の平均基本給与額の差は、月32,403円でした。単純に10年で割ると、1年あたり3,000円台になります。
ただし、これは別々の人の平均どうしの差です。同じ人の昇給を10年追いかけた数字ではありません。病院の規模や設置主体によっても、給与表の作りは変わります。目安として、職場の昇給が平均からどのくらい離れているかを見る時に使ってください。
| 区分 | 平均基本給与額 | 平均税込給与総額 |
|---|---|---|
| 新卒(高卒+3年課程) | 216,416円 | 285,078円 |
| 新卒(大卒) | 221,883円 | 292,527円 |
| 勤続10年・31〜32歳・非管理職 | 254,286円 | 340,278円 |
税込給与総額には、通勤手当、住宅手当、夜勤手当、処遇改善に関わる手当などが入っています。時間外勤務の手当は入っていません。夜勤は、三交代なら月8回、二交代なら月4回した場合として計算されています。
出典: 日本看護協会「2025年病院看護実態調査報告書」表45・表46(2025年度実績・回答病院3,073〜3,226)
事務に移ると、昇給以外に変わるもの
事務職の昇給が3,500円でも、夜勤がなくなればその分の手当もなくなります。同じ調査では、夜勤手当を1回いくらと決めている病院の平均で、二交代の夜勤1回が11,470円でした。三交代は準夜4,300円、深夜5,211円です。
二交代で月4回入っていれば、それだけで月4万円を超えます。年に数千円の昇給の差では、すぐには埋まらない金額です。逆に、夜勤明けの疲れや生活リズムを優先したい人には、手当より大きな価値があります。
比べる時は、次の表の項目を1つずつ書き出すと、数字の取り違えが減ります。
| 比べる項目 | 今の病院で見る所 | 移る先で聞く所 |
|---|---|---|
| 基本給 | 給与明細の基本給 | 求人票の基本給(手当と分けて) |
| 昇給 | 去年と今年の明細の差 | 前年度の昇給の実績額 |
| 夜勤・残業の手当 | 夜勤の回数と1回の額 | 残業の平均時間と手当の有無 |
| 賞与 | 何か月分か・計算のもと | 前年度の実績(何か月分か) |
| 休み | 4週8休か・年間休日 | 年間休日・土日祝の扱い |
看護師の資格手当や処遇改善の手当は、看護職として働く間だけ付くものです。事務に移る前に、どの手当が消えるのかを明細で数えておくと、比べる数字が実態に近づきます。
看護師のまま、給料の上がり方を変えたい時は?
投稿の人は、急性期から回復期、訪問看護と、看護の中で働く場所も変えてきました。給料の上がり方は、職種を変えなくても職場で変わります。
例えば訪問看護は、病棟の夜勤の代わりにオンコール(夜間の電話当番)を置く事業所もあり、手当の付き方も病棟と違います。働き方の中身は訪問看護の職場ガイドにまとめています。夜勤のない働き方なら、健診センターも比べる候補に入ります。

病院を比べるなら、昇給の額だけでなく休日の数も一緒に見てください。年間休日120日以上の病院の一覧から入ると、休みを減らさずに条件を比べられます。
求人の探し方は1つではありません。都道府県のナースセンターは、看護職向けの無料の職業紹介をしています。民間の転職サイトを使うなら、看護師の転職サイトの比較で、各社の公式ページに書かれている事実を並べています。
- 1病院データベースで給与・夜勤・休日を調べる
- 2気になる条件を持って転職サイトに相談する
昇給の額は、面接で数字で聞いていい
求人票の「昇給あり」「賞与年2回」だけでは、580円なのか5,000円なのか分かりません。面接や見学の時に、数字で聞いて大丈夫です。聞き方の例を並べます。
- 「前年度の昇給は、看護師の平均でいくらでしたか」
- 「昇給は年に何回で、評価はどう決まりますか」
- 「ベースアップ評価料の分は、基本給と手当のどちらで支給していますか」
- 「賞与は基本給の何か月分で、前年度の実績はいくらでしたか」
- 「夜勤手当は1回いくらで、月に何回くらいですか」
聞いた答えは、その場で手帳にメモします。複数の職場を比べる時は、同じ質問を同じ順番で聞くと、表に書き写しやすくなります。
給料の不満が、疲れや眠れなさと重なっている時もあります。体調が崩れている時は、転職の判断より先に医師に相談してください。給与の計算や未払いが気になる時は、労働基準監督署や社会保険労務士に聞けます。
よくある質問
- 昇給580円って、看護師だと普通なんですか?
- 1人の看護師の年間昇給額の全国平均は、この記事で確かめた公的な資料には載っていませんでした。参考になるのは日本看護協会の調査で、新卒(大卒)と勤続10年の平均基本給の差は月32,403円です。別々の人の平均どうしの差なので、目安として使ってください。
- ベースアップ評価料が始まったのに、給料が上がった気がしません。
- ベースアップの分は、基本給ではなく別の名前の手当で付いている病院もあります。去年と今年の明細を並べて、基本給と手当を1行ずつ比べてください。それでも分からない時は、人事課や給与担当に項目の意味を聞くのが確実です。
- 看護師から事務に移ると、手取りは下がりますか?
- 夜勤手当や看護職の手当がなくなる分は、確実に減ります。日本看護協会の調査では、二交代の夜勤1回の手当は病院の平均で11,470円でした。移る先の基本給・賞与・昇給の実績を聞き、今の明細と同じ項目で比べてください。
- 面接で昇給の額を聞くと、印象が悪くなりませんか?
- 給与は働く条件の一部なので、数字で聞いて差し支えありません。「前年度の昇給は看護師の平均でいくらでしたか」のように、実績を聞く形にすると答えてもらいやすくなります。賞与の月数や夜勤手当の額も一緒に聞いておくと、年収で比べられます。
次にやること
- 去年と今年の4月の給与明細を並べ、基本給・手当・夜勤手当の動きを書き出す
- 事務など別の仕事を考えるなら、消える手当を数えたうえで、移る先の昇給の実績額と賞与を聞く
- 看護師のまま条件を変えるなら、病院検索で休日や夜勤の形を見比べる
出典・参考(確認日 2026年11月7日)
